2025年10月に新設された教育訓練休暇給付金は、無給の休暇を取って学ぶ人の生活費を補償する制度です。ただし受け取ると、休暇開始日より前の雇用保険の加入期間が、失業給付の計算から除かれます。長く勤めた人ほど失うものが大きい。申し込む前に確認しておくべきことを、厚生労働省の業務取扱要領に基づいて5つに整理しました。
制度情報の基準日 2026-08-23 / 出典は厚生労働省 業務取扱要領・パンフレット(PL080801保07)
名前が似た制度が4つあるせいで、いちばん最初のところで取り違えている人が多い制度です。
教育訓練休暇給付金は、受講費用の補助ではありません。学ぶために無給の休暇を取った人の生活費を補償する制度です。受講費用のほうを補助するのは「教育訓練給付金」という別の制度で、こちらは休職しなくても使えます。
| 制度 | 払われる対象 | 休職が必要か |
|---|---|---|
| 教育訓練休暇給付金 この記事の対象 | 無給休暇中の生活費 | 必要(連続30日以上・無給) |
| 教育訓練給付金 | 入学料・受講料の一部 | 不要 |
| 教育訓練支援給付金 | 離職者の受講中の生活費 | —(離職者向け・45歳未満) |
| 職業訓練受講給付金 | 失業給付を受けられない求職者の生活費 | —(求職者向け) |
これがこの制度の最大の注意点で、かつ最も知られていない点です。
厚生労働省の業務取扱要領は、教育訓練休暇給付金の支給を受けた場合について、こう定めています。休暇を開始した日より前の被保険者であった期間は、求職者給付(失業給付)の受給資格の要件となる被保険者期間に含まれない。さらに、基本手当の所定給付日数を決める算定基礎期間からも、その期間は除かれます。
つまり、失業給付の側から見た勤続年数が休暇開始日からの再スタートになるということです。
20年勤めた人が、この給付金を受けたとします。
| タイミング | 失業給付から見た加入期間 | 基本手当の所定給付日数 |
|---|---|---|
| 給付金を受ける前に退職した場合 | 20年 | 150日 |
| 給付金を受けた後、1年働いて退職した場合 | 1年(休暇開始日から起算) | 90日 |
受け取る金額と、将来失うかもしれない失業給付を天秤にかける必要があります。受け取れる額はこちらで概算できます。加入期間を入れると、失う可能性のある所定給付日数も一緒に表示されます。
倒産・解雇等により離職した特定受給資格者が、教育訓練期間中または教育訓練休暇の終了後6ヶ月以内に離職した場合には、休暇開始日前の被保険者期間も通算できる救済措置があります(業務取扱要領56731・56735)。
ただし、自己都合で辞める場合には適用されません。「学び直して転職しよう」という動機でこの制度を使う場合、その転職が自己都合退職を伴うなら、この例外の対象外になります。ここは制度の設計として、かなり効いてくる部分です。
支給要件のひとつが「無給の休暇であること」です。この「無給」はかなり厳格に運用されます。
業務取扱要領は、会社が休暇中の生活費を補助するための手当を支給した場合について、「そもそも教育訓練休暇給付金の支給要件である『無給の休暇』を取得したといえないことから、教育訓練休暇給付金は支給されない」としています。一部有給でも同じです。
一方で、まったく逆の扱いになるものがあります。
| 会社から出るもの | 教育訓練休暇給付金への影響 |
|---|---|
| 休暇中の生活費を補助する手当 | 全額不支給になる |
| 受講料・資格試験の受験料を補助する手当 | 影響なし(就労の対価ではないため「収入」に当たらない) |
会社の制度を確認するときは、この2つを区別して聞いてください。「休暇中に何か出ますか」という聞き方だと、答える側も区別せずに答えてしまいます。
失業給付の基本手当には7日間の待期がありますが、教育訓練休暇給付金の業務取扱要領に待期の規定は見当たらず、支給対象日は休暇開始日の当日から数えます。
厚生労働省のリーフレットが示す試算例(月収35万円で月額約19.5万円)も、30日分を満額で計算したときの数字と一致します。7日分を差し引くと合いません。
ただし、自分の労働などによって収入を得た日は認定されず、その日は支給されません。要領は「教育訓練休暇給付金の支給に係る教育訓練休暇の認定単位は1日単位である」と定めており、減額ではなくその日まるごと不支給という扱いです。
休暇中に副業やアルバイトをすると、働いた日数分だけ給付が減ります。育児休業・介護休業を取得した日も同様に認定されません。
この制度は、会社側の協力なしには使えません。就業規則等に基づく休暇制度が必要で、賃金月額証明書の提出も会社が行います。人事に相談するとき、この3つを具体的に聞いてください。
支給要件は「一般被保険者である労働者本人が業務命令によらず自らの意思で教育訓練を受けるために取得する休暇」です。会社に命じられて受ける研修のための休暇は対象になりません。会社と相談する際、この点が曖昧なまま進むと後で問題になります。
失業給付の「4週間ごとの失業認定日」に相当するものが、この制度にもあります。休暇に入れば自動的に振り込まれる、という制度ではありません。
| 書類 | 誰が出すか | どこへ | いつまで |
|---|---|---|---|
| 教育訓練休暇開始時 賃金月額証明書 | 事業主 | 事業所を管轄するハローワーク | 休暇開始日の翌日から10日以内 |
| 支給申請書(受給資格の決定) | 本人 | 住居所を管轄するハローワーク | 休暇開始日から30日以内(パンフレットの案内) |
| 教育訓練休暇取得 認定申告書 | 本人 | 同上 | 休暇開始日から30日ごとの指定認定日(来所・郵送等) |
| 教育訓練休暇取得確認票 | 事業主 | 同上(支給申請書に添付) | — |
| 教育訓練受講証明書 | 教育訓練の実施者 | 同上(認定時に添付) | — |
制度の設計をそのまま読むと、向き不向きがはっきり分かれます。
「受け取れる額」と「失うかもしれない失業給付」は、どちらも自分の賃金と加入期間から計算できます。感覚で決める前に両方を数字にしてください。教育訓練休暇給付金シミュレーターで、日額・給付日数・総額と、リセットされる期間を同時に確認できます。
対象になるのは、①大学・大学院・短大・高専・専修学校・各種学校が提供する教育訓練、②教育訓練給付の指定講座、③これら以外でも本人の疎明をもとにハローワークの所長が制度趣旨に合致すると確認したもの、のいずれかです。
②の指定講座を選ぶと、受講費用のほうも教育訓練給付金の対象になります。生活費と受講費用の両方に制度が効くので、同じ学ぶなら指定講座から選ぶほうが有利です。指定されているかどうかは厚生労働省の教育訓練講座検索システムで確認できます。指定は4月1日付と10月1日付の年2回更新されるため、スクールの広告ではなく検索システムで確認してください。