離職して専門実践教育訓練を受ける人の生活費を補償する教育訓練支援給付金は、基本手当日額の80%から60%に引き下げられました。判定は受講開始日で、令和7年4月1日以降に受講を開始した人が対象です。上限額に届く人だと1日あたり1,654円、30日で約5万円変わります。それでも受ける価値はありますが、一度でも出席率が8割を割ると以後一切支給されないなど、金額以外にも知らないと詰む条件があります。
制度情報の基準日 2026-08-23 / 出典は厚生労働省 業務取扱要領(教育訓練支援給付金)・専門実践教育訓練のご案内(001529622)・令和6年法律第26号の施行通達
厚生労働省のパンフレットは、こう書いています。
雇用保険の基本手当の日額の60%に相当する額(※)をハローワークから支給する制度です。※ 令和7年3月31日以前に受講を開始する場合の教育訓練支援給付金は、雇用保険の基本手当の日額の80%に相当する額になります。
業務取扱要領も同じ内容を、より厳密に書いています。「支給日額……に60/100(令和7年4月1日前に当該専門実践教育訓練を開始した者については80/100)を乗じて得た額」。
基準になるのは「受講開始日」です。支給を受けた日でも、申請した日でも、離職した日でもありません。令和7年3月31日までに受講を開始していれば、その訓練が続いている間は80%のままです。
根拠は令和6年法律第26号(雇用保険法等の一部を改正する法律)で、施行日は令和7年4月1日です。同じ改正で、この制度自体の期限が令和7年3月31日から令和9年3月31日まで延長されました。給付率を下げる代わりに2年延ばしたという組み合わせです。
この制度は45歳未満が対象なので、実際に効いてくるのは基本手当日額の上限のうち上の2区分です。令和8年8月1日適用の金額で計算すると、こうなります。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額(上限) | 80%だったとき | 60%のいま | 1日あたりの差 |
|---|---|---|---|---|
| 29歳以下 | 7,450円 | 5,960円 | 4,470円 | −1,490円 |
| 30〜44歳 | 8,270円 | 6,616円 | 4,962円 | −1,654円 |
| 下限(全年齢共通) | 2,562円 | 2,049円 | 1,537円 | −512円 |
30〜44歳で上限に届く人だと、30日あたり198,480円が148,860円になります。差は約5万円。2年課程なら100万円を超える差です。
日額は基本手当と同じ算定式で決まるので、金額の見当は教育訓練休暇給付金シミュレーターで近い形で確認できます(あちらは休暇給付金用の計算ですが、賃金日額と基本手当日額の出し方は共通です)。そこで出た日額に0.6を掛けたものが、この制度の日額の目安になります。
この制度でいちばん危険なのはここです。パンフレットの表現はこうです。
欠席が多く、ある2か月の出席率が8割未満になった場合、以後一切教育訓練支援給付金は支給されません。
「以後一切」が何を意味するのかは、業務取扱要領を読むとはっきりします。
前回以前の支給単位期間において出席率が8割未満となったことがある場合、支給申請があった支給単位期間の出席率が8割以上であったとしてもこれを満たさない。
つまり挽回できません。1回目の2か月で7割だった人が、2回目以降を皆勤にしても、支給要件を満たさないままです。復活する仕組みがないという設計です。
業務取扱要領は「教育訓練実施日のうち出席しなかった日についてその出席しなかった理由は問わず出席率の計算を行う」としています(一部の除外事由を除く)。体調不良でも、家庭の事情でも、欠席は欠席として数えられます。「事情があれば考慮される」という前提で予定を組まないでください。
救いもあります。要領は「1実施日における訓練の2分の1以上に相当する部分を受講したものについては、1/2日分受講したものとして取り扱う」と定めています。遅刻や早退で半分以上出席していれば、丸ごと欠席にはなりません。行けなくなりそうな日でも、半分出れば0.5日拾えます。ぎりぎりの人にとっては、この差が効きます。
なお、この8割ルールは教育訓練支援給付金の要件です。専門実践教育訓練給付金そのものの法定要件として「8割以上出席」を定めた規定は業務取扱要領に見当たりません(修了の判定は各教育訓練施設の修了認定基準によります)。専門実践の給付金側の条件はこちらで整理しています。
ここは制度の組み立てを知らないと必ず読み違えます。パンフレットの記述です。
実際に基本手当の支給を受けたかどうかにかかわらず、基本手当の残日数がある場合は、教育訓練支援給付金は支給されません。基本手当の手続きを取っていない場合でも、受給資格がある場合には、離職した日の翌日から1年間は教育訓練支援給付金は支給されません。また、基本手当の待期の期間や給付制限の期間も教育訓練支援給付金は給付されません。
読み解くと、次の2点になります。
一方で、支援給付金の要件には業務取扱要領の「一般被保険者でなくなった日から1年以内に受講開始日がある者」という条件があります。「離職後1年間は支給されない」と「離職後1年以内に受講を開始しなければならない」が同時に存在します。
この2つがどう噛み合うのか(基本手当を受け終わってから受講開始すれば足りるのか、受講開始さえ1年以内なら支給の開始は1年後でよいのか)は、公表資料からは読み切れませんでした。離職から受講開始までの間隔が空きそうな方は、必ず住居所を管轄するハローワークで、自分のスケジュールを示して確認してください。ここを読み間違えると、制度そのものが使えなくなります。
同じ令和7年4月から、リ・スキリングのために教育訓練を受けた場合に、自己都合退職の給付制限が解除されて基本手当を受給できるという改正も入りました(対象は令和7年4月1日以降に受講を開始したものに限られます)。
これは一見ありがたい話ですが、支援給付金の側から見ると逆に働くことがあります。給付制限が解除されると基本手当が出る → 基本手当の残日数がある間は支援給付金が支給されない → 支援給付金の開始がむしろ後ろにずれる、という順序になるためです。基本手当のほうが日額は高い(支援給付金はその60%)ので損とは限りませんが、「いつから何が出るのか」の並びは自分のケースで確認しておく必要があります。
パンフレットに並んでいる要件をそのまま挙げます。1つでも欠けると支給されません。
過去に教育訓練給付金を1回でも受けていると、教育訓練支援給付金は受けられません。数年前に一般教育訓練給付金で簿記やTOEICの講座を受けて2万円戻ってきた、というだけでも該当します(平成26年10月1日前の受給には例外があります)。
ややこしいのは、専門実践教育訓練給付金そのものは受けられるということです。前回の受給から3年経っていれば、受講費用の50〜80%は戻ります。受けられなくなるのは生活費のほう(支援給付金)だけです。「昔ちょっと使ったことがある」人は、離職前にここを必ず確認してください。金額の桁が違います。
①のとおり、この制度は専門実践教育訓練給付金の受給資格があることが前提です。受講開始日の2週間前までの受給資格確認と、訓練前キャリアコンサルティングを受けたジョブ・カードが必要になります(受講前の手続きの詳細はこちら)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給単位期間 | 受講開始日から2か月ごと。訓練開始日に応当する日で区切るので、暦月ではありません。修了日が属する期間は、修了日で切れます |
| 認定 | 原則として2か月に1回の認定日に、住居所を管轄するハローワークで失業の認定を受ける |
| 認定の基準 | その支給単位期間に、専門実践教育訓練を受講した日が開講日数の8割以上確認できること |
| 待期 | 失業している日が通算して7日に満たない間は支給されない |
| 日額の端数 | 1円未満は切り捨て |
| 支給される期間 | 専門実践教育訓練を修了する見込みで受講している間、その教育訓練が終了するまで |
「失業の認定」という言葉が出てくるので求職活動の実績が要るように見えますが、この制度の認定で確認されるのは訓練への出席率です。求職の申込み自体は必要ですが、認定にあたって求職活動実績を求める規定は、業務取扱要領の中に見つけられませんでした。
この記事を書くにあたって一次資料に当たりましたが、次の点は確定できませんでした。推測で埋めていません。該当する方はハローワークで確認してください。
支援給付金は専門実践教育訓練の受講者向けで、通信制・夜間制は対象外です。つまり「昼間、通学で、専門実践に指定されている講座」を選ぶ必要があります。しかも受講開始日の2週間前までにハローワークでの手続きを終えていなければなりません。
指定の有無と区分は厚生労働省の教育訓練講座検索システムで確認できます。検索システムには指定が始まる前の講座も載っているので、指定期間の確認まで含めた見方は講座検索システムの読み方にまとめました。